ハイスクールの生徒を同じ数だけ集めて調べるより、アカゲザルのほうがいくらか簡単だからだ。
性衝動と脳の発達の関連は、アカゲザルにも見ることができる。
仲間より1年早く身体成熟に達したメスは、生理も定期的にあるし、傍目には生殖ができるように見えるが、交尾に執着しないし、妊娠もしない。
若いメスは、まだ自分が何をしているかわかっていないのではないかとWは考える。
交尾開始の主導権はメスが握っているので、若いメスも最初のうちは「その気になってつっぱしる」ことがある。
しかしアカゲザルの群れは、長老格のメスが支配している。
彼女たちの厳しい監視の目があるので、オスは怖じ気づいてなかなか手を出せないのだ。
思春期のメスは、引っこみ思案で恥ずかしがり屋だ。
Wが観察していたとき、若いメスが大きなオスににじり寄ったことがある。
彼に触ろうと腕を伸ばしたメスだが、その手はぶるぶる震えていて、Wは思わず笑ったという。
わかるかい?若いメスは、生まれてからずっとオスと暮らしていたんだ。
それなのにある日とつぜん、そばに行ってグルーミングしたい衝動が起こった。
きっとオスに近づいたメス本人も、「どうして私はこんなことがしたいのかしら?」と不思議に思ってるだろう」。
もちろん、集団内の力関係だけがすべてではない。
早熟なメスが交尾をしないのは、脳の準備がまだ整っていないからだとWは推論する。
生殖機能はできあがっていても、認知的に成熟していない。
脳の接続がまだ完了していないのだ。
性衝動があっても、それを交尾の合図として解釈する回路がまだつながっていないので、どうしていいかわからない。
「神経内分泌システムをうまく制御できるようになっていても、そのシステムに反応し、性行動を開始させるシステムがまだ成熟していない」。
これは人間にも当てはまるだろう。
早熟な子は、平均的な年齢で身体成熟を迎える子よりも、問題に直面することが多い。
それは「生殖システムだけ先にスイッチが入ってしまい、それを管理する脳のシステムがまだ眠っている」からだとWは説明する。
各種ホルモンの分泌と性行動は、私たちが思っている以上に独立して発達していくから、それだけ脳の成長に振りまわされることが多いのかもしれない。
「もちろんホルモンと連動する部分もあるだろう。
だがそれ以上に驚きなのは、脳が成熟するときの大きな変化が、胎児のときからすでに始まっていて、予定表どおりに進行していくことだ」。
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